「擬宝珠」


 
あらすじ ある大店の若旦那が原因不明の病いでふさぎ込んでいる。親孝行で跡取り息子だけに大旦那はたいそう心配だ。

 医者が言うには心の病だから、誰か気の置けない人から聞き出してもらうしかないと言う。大旦那は横浜から出入りしている幇間桜川長光を呼ぶ。

大旦那 「せがれは何か心に思い続けていることがあるようだが、私らが聞いても何も言わない。せがれは小さい頃からお前さんになついているからきっと話してくれるだろう。そうなれば金側の時計をあげる」、

 早速、長光は若旦那の部屋へ行って、「清水の観音堂で見染めた町娘高尾太夫幾代太夫のような花魁?掛け軸に描かれた美人?それともみかんが食べたい?」

 若旦那は恥ずかしそうに小声で話し始めた。「実は私は浅草の観音様の五重塔のてっぺんの擬宝珠(ぎぼし)の真っ青な所がなめたいんだ」、早速、長光が大旦那に話すとなんと大旦那も擬宝珠なめのオタクで、あちこちの橋の擬宝珠をなめ回っていたのだ。

大旦那 「家(うち)の家系は先祖代々擬宝珠なめが大好きなのだ。やはり血筋は争えない」と納得、大旦那は長光に二百円の寄付を持たせ浅草寺に交渉に向かわせる。

 浅草寺は人助けと寄付の二百円でOK。すぐに足場を組んで下に防護ネットを張って準備万端で若旦那を呼ぶ。すっかり元気になった若旦那は身軽に五重塔のてっぺんへ登って、擬宝珠(宝珠)を心ゆくまでペロペロペロペロ。下では大旦那が羨ましそうに舌なめずりしてよだれを垂らしている。なめ満足して下りて来た若旦那に、

大旦那 「五重塔の擬宝珠は美味かったか?どんな味がした?」

若旦那 「はい、とても美味しゅうございました。塩の効いたたくあんの味がしました」

大旦那 「お前は親孝行香香)だからたくあんの味がするのだろう。塩加減は三升か四升か五升か?」

若旦那 「なあに、上は六升(緑青)の味がしました」


        
浅草寺五重塔
相輪のてっぺんが宝珠(この落語では擬宝珠







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