★あらすじ 甚兵衛さんの家へ、喜ィさんが女子(おなご)が惚れるいい工夫はないだろうかと聞きに来る。
甚兵衛 「昔から、一見栄、二男、三金、四芸、五精、六おぼこ、七ゼリフ、八力、九胆、十評判てなことを言うなあ。この中で一つでもお前にあったら女に持てるてなもんや」と言って、一つ一つ喜ィさんに当たってみるがどれにも当たらない。
喜ィさんは、評判の米屋の小町娘に惚れたという。甚兵衛さんは無理だからあきらめろというが、喜ィさんは何かいい工夫はないだろうかと今にも泣き出しそうだ。
甚兵衛 「惚れ薬、何がよいかといもりに聞けば、今じゃわしより佐渡が上」、なんて歌があるが、いもりの黒焼きでも使ってみるかという。オスのいもりの黒焼きを自分の身体につけ、相手にメスの黒焼きを振りかければ女子が惚れてくるというのだ。
ホンマのいもりの黒焼きでなくては効き目がないというので高津の黒焼き屋に行く。買ったオスのいもりの黒焼きを自分の身体につけ、米屋の前で娘が出て来るのを待って、ぱっと振りかけた。
運悪く、ちょうど風が吹いてきて娘にかからず店の米俵にかかってしまう。すると、高津のいもりの黒焼きの効果は抜群で、米俵が動き出して喜ィさんの方へやって来る。
びっくりして逃げ出すが米俵はどこまでもついて来る。家に飛び込んで戸締りをしても戸を破って入ってくる。甚兵衛さんの家に逃げ込むが、ここでも戸を破って入ってくる有様だ。
またも逃げ出すが米俵は後ろからヒョッコヒョッコとどこまでも追いかけてくる。
通行人 「お〜い喜ィ公、何をフーフー言いながら走ってんねや」
喜ィさん 「あっはっは〜、ああ苦しい助けてくれ」
通行人 「何がそんなに苦しいねん」
喜ィさん 「飯米に追われてまんのやがな」
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