「中沢道二」
★あらすじ 上方の心学者の中沢道二先生、日頃から江戸っ子は気が荒くて、短気で喧嘩ばかりしていると聞いている。そこでひとつ江戸へ行って心学を教え広めて万民撫育の役に立ちたいと崇高な志を持って江戸にやって来た。
早速、中橋に席を借りて、「中沢道二心学講話会」の看板を掲げた。字もろくに読めない町の連中は心学を田楽、講話をおこわ(赤飯)と勝手に読み、聞き間違ったりして大勢でやって来た。
会場は田楽、おこわにありつこうとする連中で立錐の余地もない。これを見た道二先生、こんなに心学に興味があるのかと、こっちも勝手に大満足。
まずはやさしくて面白い話から切り込もうと、
道二 「さて、ある所に金が儲かる薬を売る店と、金が無くなる薬を売る店とが並んでおった。金の儲かる薬を飲めば次第に富貴になるにかかわらず、なぜか隣の金の無くなる薬を売る店の方が繁盛している。不思議に思った男が金の儲かる薬店に行って、”お宅の薬は誰も良薬と知りながら買い手が少なく、隣の金の無くなる薬は誰も毒薬と知りながら大勢買いに来るのは一体どういうわけでしょうか”と、聞くと主人は・・・・・」
会場はざわついて誰も聞いてなく、「そんな長え口上なんか止めちまえ、田楽はどうした!早く食わせろ!・・・」で、おさまりがつかなくなった。
そのうちに、「ふざけやがって、帰(けえ)ろう、帰ろう」とぞろぞろと帰ってしまった。
道二 「こりゃあかん。所詮、心学は江戸っ子にはなじまねんやろか」と嘆いて、ぐるっと席を見ると一人だけ残って座っている職人風の男がいる。
道二 「おや、あなたは江戸っ子にしては珍しい。わたいの話に興味がおありかな?」
職人 「なにを言いやがる。しびれが切れて立てねえだけだ」
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妙寿寺
中沢道二の墓がある。「説明板」には落語とは違って、
「道二の心学は庶民を始め各層に広まりました」とある。
『北沢川緑道・烏山川緑道』
客殿 「説明板」
旧鍋島侯爵邸を移築
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