「棒屋」

 
あらすじ チンドン屋が配った広告をもらった長屋の連中。読める者はおらず町内に新しい店が開店らしいのだが、何の店か分らずに寿司屋だ、そば屋だ、天ぷら屋、鰻屋などと勝手なことを言っている。

 ちょうど通りかかった割り木屋の親爺に読んでくれと頼むと、

親爺 「何や、こんな大勢寄ってからに字ィ読めるやつ一人もおりゃせんのか。情けないこっちゃ。どれ貸してみいや。読むで・・・、一つ天秤棒、栃麺棒六尺棒、閂(かんぬき)の棒、長持ちの棒、心張り棒、棍(こん)棒、金棒、警棒、如意棒、指揮棒、指し棒、平行棒に芋棒、綿棒、ゲバ棒、何棒にしてもご注文の棒、出来ぬその節は店の品物如何ように遣わすなりと言えども一文の申し分御座なき候。 下寺町ずく念寺前 棒屋長兵衛 各々様、どや、分ったか。こりゃ棒屋のチラシやがな」

長屋① 「だれだ、天ぷら食いに行こ言うたやつは。けど、おっそろしく棒並べよったな」

長屋② 「よっしゃ、こないだの提灯屋の時と同じようにこのチラシ持って行て、訳の分からんよな棒を注文して店の物持って来たろ」、チラシを持って連中はぞろそろと棒屋へやって来た。

長屋① 「これ、お前んとこのチラシやろ。どんな棒でもあるんか?」

棒屋 「へい、左様で。棒という棒は何でも取り揃えておりますよって、へへぇ・・・」、チャンス到来と長屋の連中は、貧乏、泥棒、通せんぼう、ケチンぼう、赤ん坊、木偶(でく)の棒・・・、と立て続けに棒を並べていくが、その都度、棒屋は頓智をきかせて品物を出して来るので、連中は入らない物まで買わされてしまい、しばし茫然。

長屋③ 「おい、つんぼうを出してくれ」、棒屋は少しもあわてずに、鉄梃の柄にする鉄梃つんぼという樫の棒を出してきた。

長屋③ 「う~ん、なるほど、鉄梃つんぼか。じゃあ、このつんぼを五本買って帰ろう」

棒屋 「へえ、つんぼはあまり仕入れまへんので、それ一本きりしかございまへんので・・・」

長屋③ 「ははぁ、こんなものは売れが遠いので仕込まねえのんか」

棒屋 「いいえ、耳が遠うございます」

 


    
如意棒



663(2018・2)




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