「星野屋」
★あらすじ 星野屋の旦那に囲われているお花。旦那がやって来て、今日かぎり別れてくれと手切れ金を出す。お花は旦那に、ほかに女ができて別れるくらいなら死ぬと言い出す。旦那は面倒なことが起きて、星野屋の暖簾をおろし店をたたんで、死ぬのだと言う。お花はそれなら私も一緒にと言ってしまう。
その夜、旦那が来て二人で心中に出かける。いろいろ歩いたあげく、旦那は吾妻橋から先に身を投げてしまう。
お花 「あれっ、旦那・・・困っちまったねえ。生きていれば面白い思いもできるのに・・・旦那、まことにすみませんが、あたしは、少し都合があるから、死ぬのはよしますよ」、お花は飛び込まずそのまま家へ帰ってしまう。
夜遅く雨の中をお花の家へ、二人の仲をとり持った重吉がびっしょりになって駆け込んでくる。旦那の幽霊が枕元に出たというのだ。旦那は毎晩、幽霊に出て、一緒に死ぬ約束を破った薄情なお花をとり殺すと言っていたという。
お花 「・・・どうかして幽霊の出なくなる工夫はないだろうかねぇ」
重吉 「頭の毛でも根元からぷっつりと切って、一生亭主を持ちませんとでも言ったら出なくなって助かるかも知れねえな」、お花は隣の部屋へ入り、髪を切って持ってくる。
それを見て重吉が呼ぶと旦那が入ってくる。心中はお花の料簡をためす狂言で、一緒に飛び込めばすぐ助けて、店一軒でも持たせてずっと世話をする手筈だったという。
すると、お花はどうせそんなことだろうと思ったからかもじを渡したんだと言って、被っていた手ぬぐいをとる。
重吉 「昼間、旦那から三十両もらったろ。あれは旦那が座敷でもって芸者、幇間(たいこもち)をあげて遊ぶときのにせ金なんだよ。一枚でも使ってみろ手が後ろに回るぞ」
お花 「まあおっかさんにせ金だって。こっちへ持って来ておくれ。こんなもん持って行きゃがれ」 と金を投げ出す。
重吉 「馬鹿、これは正真正銘、天下の御通金だよ」
お花 「まあ、おっかさん、あれ本物の金だってさ」
お花の母 「ああ、そう思ったから、三枚くすねておいたよ」
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★桂文楽(8代目)の『星野屋』【YouTube】
吾妻橋帰帆(隅田川八景・歌川広重)
吾妻橋は落語では身投げの名所で、
『唐茄子屋政談』・『文七元結』・『佃祭』・『身投げ屋』など多数に登場する。
現在の吾妻橋
「吾妻橋」
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