「団扇喧嘩」
★あらすじ 団扇(うちわ)を商っている男、冬は売れないので一年中売れる方法はないものかと考える。役者の似顔絵を書いて売ったところこれが大人気で大評判。大名家や武家の女中方からも引っ張りだこで大儲けだ。
丸の内の赤井御門守の屋敷では女中たちが団扇に夢中になって、贔屓(ひいき)の役者の団扇を引っ張りあったりして大騒ぎ。レアで珍品な大根役者や馬の足役者の絵でもプレミアがついて売買されたりして、お屋敷の勤めどころではない。
見兼ねた家老の田中三太夫が老女中に何とかしろと命じる。老女中は女中たちを庭に集め持っている団扇を全部差し出させ火をつけて燃やしてしまう。むろん自分の団十郎の内輪だけはこっそり隠したままだが。
団扇は一気にぼうぼうと燃え上がって行く。火が治まって来て煙になり出した頃、煙の中から揺ら揺らと三人の役者姿が浮かび上がった。
見ると幸四郎の石川五右衛門、福助の塩冶判官、瀬川菊之丞の小野小町姫だ。女中たちは三つ巴の大芝居が始まると大喝采で、キャ~キャ~と大騒ぎ。ところが三人は何か言い争っているように見える。
老女中 「あの者たちは口喧嘩しているようですが、どうしたんでしょう」
三太夫 「大方、おれが主役だ、あたしが主役よ、なんて揉めているのであろう」
老女中 「放っておいて大丈夫でしょうか」
三太夫 「なあに、心配するには及ばん。少し見ておれ」、しばらくすると三人の姿は揺ら揺らしぼんで消えてしまった」
老女中 「仰るとおりでございますね」
三太夫 「所詮、団扇(内輪)喧嘩じゃ」
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